境界線の虹鱒

研究ノート、告知、その他

【被引用リスト】私の論文を読んだ人はこんな論文を書いています

アカデミック承認欲求モンスター、いいねじゃ意味がないんだ被引用をくれー — ゆう(wrmtrm)/『現代思想』メタバース特集寄稿 (@wrmtw) 2022年11月6日 ……ということで、拙論を参照してもらえるととても嬉しいので、見つけた範囲のものをリストにしました。…

フィクトセクシュアルについて卒論・修論を書きたい人向け文献案内

フィクトセクシュアルやフィクトロマンティック、あるいは架空のキャラクターとの性愛や恋愛について研究したいという方のために、いくつか文献を紹介したいと思います*1。ひとまずこの辺りの文献を読んでみて、そこで参照されている先行研究を芋づる式に辿…

英語圏における「美少女アニメのせいでトランスジェンダーになる」言説の事例メモ

『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』(原題: Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters)をめぐって、英語圏では保守派からのLGBT批判のなかでアニメも批判されている、というトピックが話題…

【全文公開】フィクトセクシュアルから考えるジェンダー/セクシュアリティの政治【講演原稿】

2023年8月23日に、台湾のイベントで講演をしました。フェミニズム・クィアの文脈でフィクトセクシュアルを主題にしたイベントは、おそらく世界初ではないかなと思います。 𝟠/𝟚𝟛 三/水/𝕎𝕖𝕕【從紙性戀思考性與性別的政治フィクトセクシュアルから考えるジェン…

使っているSNSアカウント一覧

Twitter: @wrmtw (https://twitter.com/wrmtw) 使用歴が一番長いです。 Facebook: https://www.facebook.com/y.wrmt あまり更新していませんが、たまに告知などをしています。 Mastodon: @wrmtw@mstdn.jp (https://mstdn.jp/@wrmtw) 作りたて。様子を見なが…

【論文掲載】対物性愛研究の紹介および非対人性愛研究の方向性についての予備的考察

学内の紀要に論文を寄稿しました。 フェミニズムやクィアの観点での対物性愛研究をいくつか紹介したうえで、私のこれまでの研究と関連づけながら、非対人性愛について議論する際の方向性を検討する論文です。 二次元キャラクターをめぐる議論のほか、ロボッ…

二次元美少女の性的表現を「女性(や子ども)の性的モノ化」と非難することの何が問題なのか

したがってここでの課題は、あらゆる新しい可能性を可能性として愛でることではなく、すでに文化の領域のなかに存在しているけれども、文化的に理解不能とか、存在不能とされていた可能性を、記述しなおしていくことである。(ジュディス・バトラー『ジェン…

拙論「アニメーション的な誤配としての多重見当識」の繁体中文訳が公開されました

「アニメーション的な誤配としての多重見当識」繁体中文訳 拙論「アニメーション的な誤配としての多重見当識:非対人性愛的な「二次元」へのセクシュアリティに関する理論的考察」の繁体中文訳*1が公開されました。下記のウェブページからご覧いただけます(…

対人性愛中心主義とシスジェンダー中心主義の共通点:「萌え絵広告問題」と「トランスジェンダーのトイレ使用問題」から

はじめに 対人性愛中心主義とシスジェンダー中心主義は密接に結びついているのではないか。トランスフォビアと萌えフォビアは同じ構造に根差しているのではないか。すでに何度か論文やTwitterでこの話をしてきたが、ここですこし具体的に説明しておこうと思…

ACCAMER「ノミック」(作詞・作曲・編曲:椎乃味醂)がノンバイナリーの抵抗ソングだった

公式MVと楽曲の概要 本題に入る前に、この曲に関する背景情報を確認しておく。 この曲はTVアニメ『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』エンディング主題歌である。私自身は未視聴なのだが、おそらくタイトルどおりの内容を含んでいると思われる。 そう…

最近ウェブ公開された論文

日本社会病理学会の学会誌『現代の社会病理』に去年掲載された論文が、J-STAGEでウェブ公開されました。「フィクトセクシュアル」に関するツイッターの投稿を分析した予備調査の論文です。 タイトル「日常生活の自明性によるクレイム申し立ての「予めの排除…

予備知識ゼロから『ジェンダー・トラブル』をとりあえず読めるようになるための読書案内

ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』は、フェミニズムやクィア・スタディーズのみならず様々な領域に多大な影響を与えた重要な著作です。しかし内容も文章もかなり難解で、おそらく予備知識なしには読めないものだと思います。そのため本記事で…

【文献メモ】他者化されたポルノ消費者について、およびポルノ受容者への調査

Alan McKee, 2017, "The pornography consumer as Other." Clarissa Smith, Feona Attwood and Brian McNair eds., The Routledge Companion to Media, Sex and Sexuality. Research Gateで全文公開されている。 要約メモ 従来のポルノ消費者に関する研究は…

【論考掲載】『マンガ論争』vol.23に寄稿しました

ミニコミ誌『マンガ論争』vol.23にて、「『現実性愛中心主義』とマンガ表現規制――いわゆる『二次元コンプレックス』の視点から」という論考を寄稿いたしました。 近年では、いわゆる「二次元のキャラクター」との結婚を表明する人々の語りが徐々に可視化され…

なんでクィア理論ではいまだに精神分析が扱われているの?

ジェンダーやセクシュアリティについての哲学的な議論では、フロイトやラカンなどの精神分析理論が繰り返し批判されてきた。なかでも有名な批判の1つが、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』だろう*1。 しかし、それにもかかわらず、精神分析理…

【文献メモ】トランスジェンダー差別とクィア・アフェクト理論――アメリカの「トイレ法案」を事例に

Julie D. Nelson, 2018, “Governing Bodies: The Affects and Rhetorics of North Carolina’s House Bill 2” Lei Zhang, Carlton Clark eds., Affect, Emotion, and Rhetorical Persuasion in Mass Communication, New York: Routledge, 106-114. 2016年2月…

「観客」はそこにいる:『やがて君になる』における「舞台」というモチーフと「安全ではない」槙くんについて

※原作7巻(第39話)までのネタバレを含みます。 ※舞台版「やがて君になる」のネタバレはありません。 ※この記事は単体で完結していますが、前回の記事を先に読むとさらに理解が深まります。お時間があればこちらの記事もご覧ください。 ※2021年9月17日追記:…

『セックスの哲学』The Philosophy of Sex: Contemporary Readings 目次一覧(暫定版)

セックスの哲学に関する論文集 The Philosophy of Sex: Contemporary Readings の収録論文リストです。文献探しにご活用ください。 ※以下のリストはAmazonの目次から作成した暫定版です(気が向いたら古い版もリスト化するかもしれません)。無料公開されて…

「読者」は恋をしていない:なぜ『やがて君になる』に槙くんが必要なのか

「恋愛」とは何か。 この問いには色々な答えがありうるし、上手く言えないという人もいるかもしれない。それでも多くの人にとって、「恋愛」という言葉が何を指し示しているのかは(たとえうまく言えないとしても)当たり前のように「わかる」ものなのだろう…

【文献メモ】二次創作のアーカイブに関するフェミニズム・クィア的評価

Rogue Archives: Digital Cultural Memory and Media FandomBy Abigail De KosnikChapter 3 Queer and Feminist Archival Cultures: The Politics of Preserving Fan Works アビゲイル・デ・コズニック『ならず者のアーカイブ――デジタル文化の記憶とメディア…

エロサイトにできる社会貢献を考えてみた

何気なく書いたツイートが思いのほか伸びた。 エロサイトの入口ページについてなんだけど、「あなたは18歳以上ですか? はい/いいえ」をクリックさせるより、「正しい性知識を選べ」という2択問題を2〜3問クリックさせる方が圧倒的に有益なのでは?? — ゆ…

安全、正気、そして合意――英米でのS/M実践者についての研究

Darren Langdridge (2016) "The time of the sadomasochist" in Introducing the New Sexuality Studies 3rd Edition (p.337-345) 精神医学による病理化と、それに対する抵抗 法的な闘争 メディアでの扱い サドマゾヒズムの語りの出現 安全、正気、そして…

【文献紹介】A. W. イートン「賢明な反ポルノフェミニズム」後編

前回の記事の続きです。 前編では、「そもそもなぜポルノが問題なのか」「ポルノは具体的にどのような害をもたらしうるのか」を議論した。後編では、そうした有害仮説について、実証面での議論を進めていく。なお論文中で言及される先行研究については、原文…

【文献紹介】A. W. イートン「賢明な反ポルノフェミニズム」前編

Eaton, A. W. 2007. “A Sensible Antiporn Feminism.” Ethics 117(4):674–715. ポルノグラフィをめぐっては、日本でもネットなどでしばしば論争になる。しかしそうした “論争” は、対立する双方が論点を共有していないことも多く、往々にして不毛な議論にな…

「(性的)モノ化」論のアップデート――心理学的研究を踏まえて【文献紹介】

E Orehek and CG Weaverling (2017) “On the Nature of Objectification: Implications of Considering People as Means to Goals,” Perspectives on Psychological Science, 12(5): 719-30 全文PDFは上記リンク先でダウンロードできる。 梗概和訳 人がある…

無性愛(アセクシュアル)研究への招待――英語圏での研究動向(文献メモ)

Ela Przybylo (2016) "Introducing Asexuality, Unthinking Sex." in Introducing the New Sexuality Studies 3rd Edition (pp.181-191) 当該箇所の全文pdfはこちらのリンク先でダウンロードできる。 https://www.researchgate.net/publication/312664690_In…

【翻訳】英語圏の二次コン(toonophilia)概説――二次コンをめぐる言説、および当事者の声

2012年8月31日 マーク・グリフィス(Mark Griffiths) 以前のブログで、ファーリー・ファンダム(Furry Fandom:動物に扮することで性的快感を得たり、あるいは動物の格好をした人とセックスすることで性的快感を得る人のこと)と対物性愛(objectum sexuali…

Aセクも多様です――Aセクシュアルの自慰と性的空想に関する近年の研究動向(後編)

お待たせしました。以前の論文紹介の続きです。(元論文へのリンクは前回の記事にあります) 【内容報告】 前回の記事でも述べたとおり、Aセクシュアルの性的空想とマスターベーションに関する量的調査である。まずは調査結果の概要をまとめておく(今回の論…

性暴力ゲームは批判されるべきか?――レイプレイ事件に関する海外の論文

原題 “RapeLay and the return of the sex wars in Japan”(レイプレイと日本におけるセックス戦争の再来)PW Galbraith 梗概和訳この論説では、プレイヤーに架空の女性をレイプすることを許すようなアダルトコンピューターゲームである『レイプレイ』(2006…

ゲイル・ルービン『性を考える セクシュアリティの政治に関するラディカルな理論のための覚書』個人的要約メモ

フェミニズム系文化人類学者のゲイル・ルービンによる、ゲイ/レズビアン運動やクィア・スタディーズにおける重要文献(原典初出は1984年)。多様なセクシュアリティが階層化され、下層に位置付けられたセクシュアリティが法制度や社会規範によって攻撃され…